「っだめ千歳くん…!これじゃあ外から丸見え、」
「ここ、マジックミラー」
「……え、」
「だから、しーっ。いい子にしてね」
ぽんぽん、と、優しく頭を撫でられる。
――…どっちが年上だ、まったく。
大慌てのわたしと、一貫して落ち着いている千歳くん。
…むしろ彼はこの状況を楽しんでいるようで、はずれた敬語とともにわたしの唇に当てられた彼の人差し指。ドキドキが止まらなくて、自分が爆発するんじゃないかとすら思う。
唇に当てられた彼の指先の熱が、わたしの体温へと移されていくようだった。
「ラッキー。今日ここ開いてんぜ」
「やったぁ!珍しいじゃん、総合教室が開いてるなんて」
カーテンの中、窓の外は校内外を行き交う生徒たちが見える。
千歳くんの言っていることは本当らしく、この窓は外からは何も分からないマジックミラーになっているようだ。
やって来たのは男女ふたりみたいだった。
…理解できるのは音だけで、わたしの視界は麗らかな美形の千歳くんがすべてになっている。