第一走者に指名された時はどうしようかと思ったが少しは落ち着いてきた。

「ふー………」

大きく息を吸い込む。

(よし!ついてる!)

自分の走るレーンからちょうどピストルを持つ手が見える位置だった。

(集中、集中、集中)

「位置について、ヨーイ………」

指がピストルにクッとかかった瞬間を見計らい

(よし!)

「パーンッ!!!」

音が鳴るか鳴らないかの瀬戸際でスタートをした。

「え!上手いっ!」

陸上部の吉田さんが大きく感心した。

グッと踏み込み一歩一歩蹴り出すように走る。

(顎は上げずに、腕はしっかり振って……)

頭は考えているが走る本人は必死すぎてとてもじゃないけど余裕なんてない。

「うっ!くっ…はっ…はっ…はっ…」

必死になりすぎて声にならない声を出しただただ、がむしゃらに走る。

少しでも速く走る為に本屋で陸上の雑誌を買って綺麗なフォームや呼吸法とかもしっかり勉強したがとてもじゃないけど実践出来なかった。

綺麗じゃないフォームで不細工ながらにも必死に走る姿に周りの応援にも熱が上がる。

「いけー!拓郎ー!頑張れー!」

「良いよー!もえるよー!」

剛と大橋さんの応援の声が聞こえた。

スタートダッシュの貯金は10m過ぎた時点ですでになくなってたが根性で走りきった。

「任せてー!」

僕はなんとか4位でバトンを渡す事が出来た。