剛の結婚式から数年後。

「はー!私の左手の指輪にダイヤモンドがいつ付くのかしら」

「大橋飽きたなぁ。早く松本になりたいなぁ」

「つか、私の結婚まだ?」

凄いプレッシャーの日々だった。

「僕と一緒の墓に入ってください」

「しゃー!それって結婚してくださいと違って墓に入るって事は離婚はないからね!念押すよ!しゃー!」

そして僕も幸せに出来る自信が出来、亜依子と結婚をする事を決めた。

広島に飛行機と電車で帰省した僕達は実家に帰る事なくそのまま電車を乗り換えし、僕のおじいちゃん家に行く事とした。

「広島駅から電車乗るの久しぶりかも」

そう言う亜依子はキャリーバックをよいしょっと言って持ち上げ電車に乗り込んだ。

数日分の荷物とは言え、ビジネスバッグ一つの僕と荷物の量の違いに一体何入れてるんだろと思ってしまう。

「ねぇねぇ!あれスリアロの亜依子かな?」

「え?違うでしょ。こんな所居ないよ」

電車内で女子高生からヒソヒソした声が聞こえた。

「あ、私この路線乗るの人生で2回目だ」

亜依子は凄いワクワクした顔で外の景色を眺めていた。

「そういやさ、亜依子の初恋の人の話しってどんなんだったっけ?」

僕は昔少し聞いた初恋の人の話しが聞きたいと思って話しを振った。

「んとね、同じ合唱団だった男の子だよ。名前はなんだったかな?忘れたな」

「初デートはジブリの映画だっけ?」

「そうそう、もののけ姫。一回話しただけなのによく覚えてるね!」

「人の名前とか出来事なんかの記憶力良い方なんよ僕」

「拓郎は?」

「ん?」

「初恋の人の話し。忘れたから聞かせてよ」

「僕の初恋の子は、小学校の時の同じ塾の子だよ」

「デートしたんだっけ?」

「うーん。デートと呼べるかはわからないけど。でもお泊まりした」

その言葉に亜依子が目を開いて驚いた。

「おおおおお泊まりぃぃぃ!?」

我小学生時代に何しとんじゃいしばくぞぉぉぉ!

言葉こそ出ないが顔が般若になった。

「へ、へぇ。ちなみにその子は今も知り合い?」

「うん」

「ご在命?」

「うん」

よっしゃ!やったるわ!ついにワシやったるわ!

そんな殺意がビンビンに隣から伝わってきた。

高校3年生の12月に

「上島剛…ぶっころ…」

そう言いながら夜な夜な包丁を研いでた頃を彷彿させるような狂気じみた顔をしていた。