キーンコーンと甲高いチャイムの音が鳴り、私はお弁当を取り出すとすぐに机の上に広げる。今日のおかずはなにかなあ。あっ、ミニオムレツが入ってる! これ、大好きなんだよね。

 オムレツは最後に取っておいて。キャロットラペから食べようと摘んでいると、ふと教室の中が騒がしくなった。どうしたんだろう。とある一角から、おめでとうの声が飛び交っていた。

「何かあったの?」

 訊ねると、その中心にいた栞告(かこ)はうれしそうに、
「あのね、今度、梅吉先輩とデートできるんだ」

「えっ、デート?」

 デートって、それも梅吉兄さんと?

 栞告と梅吉兄さんって、付き合ってたの!?

 驚いていると、栞告は、にこりと笑って、
「三カ月後だけどね」
 さらりとそう言った。

 はあ? 三カ月後……? あれ、私の聞き間違いかな。

「えーと、三カ月後? 三日後とか三週間後じゃなくて?」

「うん、三カ月後」

 やっぱり栞告は、きっぱりと返す。

「だって先輩、忙しいから。仕方ないよ」

「良かったね。栞告、中学の頃からずっと先輩のこと好きだったもんね」

「うん。がんばって声かけてみて良かった」

「おめでとう」と、また祝福ムードに包まれる中、私は一人その場の雰囲気についていけず。ぱくぱくと無言でお弁当を食べ続けた。