夕食を食べ終えて、部屋で宿題をして。丁度一段絡着いた所で、コンコンとノックの音が聞こえてきた。返事をして扉を開けると、部屋の前に道松兄さんが立っていた。

 兄さんは、ずいと私の鼻先に真っ白の小さな箱を突き出して、
「やる」
と一言、簡単に言った。

 なんだろう。私は首を傾げさせたまま箱を開ける。すると中にはプリンが入っていた。

「なんですか、これ?」

「なにって、プリンだ」

 いや、それは分かるよ。そうじゃなくて、どうして私にプリンをくれるの?

 兄さんは、
「別に」
 いらないならいいって、箱を取ろうとする兄さんの手を私は慌ててかわした。

 やったあ……! どうしてくれたのか分からないけど、兄さんがくれたプリンは、スーパーやコンビニで売っているものじゃなくてケーキ屋さんのプリンで。

 まあ、スーパーのお買い得プリンも、あれはあれでおいしいけどね。でも、やっぱりケーキ屋さんのプリンは特別だよね。

 せっかくだから、お風呂上がりに食べよう。

 私はプリンを冷蔵庫にしまうと、鼻歌を口遊みながらお風呂に入った。

 ゆっくり湯船に浸かって体を癒して、髪も乾かして準備万端。スプーンを片手に、いざプリンを食べようと冷蔵庫を開ける。

 だけど。

「あれ……、プリンがない……」