十月に入り、暑さがやわらいで肌寒さを感じるようになった。

制服が冬服に切り替わると同時に、寒がりの私は薄手のタイツを穿くようになった。



あの男の先輩がきっかけで、私は学校の男子に対しても恐怖を抱いて、体が震えるようになってしまった。

教室に足を踏み入れることが出来なくなって、今では保健室……別室登校をしている。

更には一人での登下校も危うくなって、悠くんに付き添って貰ったりしている。

登下校も一緒にいるのは、ストーカー対策以来のことだった。


「この前の男の人なんだけど、退学になったの」

「そう……」

「真相は分からないけど、違法な薬物を持っていた……なんて噂が出回ってる」


他にも噂があったけど、私の口ではとても言えない内容だった。


「そんな危ない奴がいなくなって良かったよ。少しは安心出来るね」


悠くんの言う通り、脅威はいなくなった。

私はこくりと頷くと、悠くんの手をぎゅっと握り締めた。


「私……明日から学校、一人で行く……」


零れた私のものは抑揚がなく、暗い声音だった。


「響、無理しないで。男が視界に入ると震えちゃうのは知ってるから」


これ以上甘えてはいけないのに、悠くんは私の心を読み取ったように私に告げる。


「何も考えずに俺に甘えていいよ」

「あ、ありがとう……」


完全に涙声だった。

悠くんの一言が嬉しくて、無性に泣きたくなる。


「響のことは守るって言ったでしょう?」

「悠くん……」