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 それから三日後。

 千夏は何となく気まずい日々を過ごしていた。陽翔の顔を見るたびに落ち着かず、顔が火照るのを押さえられずにいた。目が合えば思わず逸らしてしまうし、これでは仕事に支障がが出てしまうと、必死に耐えようとした。だが、しかし心臓が言うことを聞いてはくれない。

 落ち着いて。

 平常心よ。

 年下は趣味ではなかったでしょう。


 そこへ磯田が眼鏡をクイッと上げながら、社長室へと入って来た。

「社長、何度もノックをしたのですが、入ってもよろしいですか?」

 すでに部屋の中に入ってきているが、入室の許可を磯田は聞いてきた。

「ご……ごめんなさい。何か用だったのかしら?」

「ええ、社長に一日密着したいというテレビ局の方から連絡が来まして、一度お話だけでも聞いてもらえないか、と言うことだったのですが、どうされますか?この会社の宣伝にもなりますし、良い話しではないかと思われるのですが……」

「一日密着……ドキュメンタリーみたいなことかしら?って言うか私なんかでいいのかしら?」

「うちは今かなり業績を上げていますからね。それに今話題の美人女社長とくれば、メディアも黙ってはいられないでしょう」

 美人社長って……。

 あまり乗り気にはならないけれど、会社のためになるのなら仕方ないか。

「分かったわ。とりあえず話だけでも聞いてみるわ」

「そうですか。では、私からテレビ局の方には連絡を入れておきます」

「お願いね」

「かしこまりました」


 仕事以外に仕事が増えたわ。

 はぁー。

 面倒くさい。

 一礼しながら部屋を出て行く磯田を見つめながら、千夏は溜め息を付くのだった。