トンッ、とカンナちゃんの時みたいにとーか君の背中を押したら、その体は簡単に宙に浮いた。
男の人でも相手が気を抜いていれば簡単に落とせるんだなぁなんて思った。

まるでスローモーションみたいに落ちていったとーか君。

「あ…。」

最後に聞こえた悲鳴にもならない彼の声。お腹が痛い。痛いくらい涙が滲んで、笑いが止まらない。

「あはははは…あはっ…あははははは………!!!!!!!!!!!!!!」

あんなに私の前で偉そうぶって、私を服従させた気になって調子に乗っていたくせに、こんなに簡単に落ちてしまった。
カンナちゃんよりも四肢をジタバタとさせていて、ダサいなぁって思った。

本当に単純な男。なんだかちょっと拍子抜けしちゃったな。でも一年間もこんな恋愛ゲームが出来て楽しかった。

特にあの時…。とーか君に絞められた、奴の指の感触は今でもはっきりと思い出せる。
思い出すたびに体中が燃え盛るほどに憎悪が湧いた。

あの時反抗しないでただジッと耐え抜く。それは私ととーか君の勝敗を分けると分かっていた。
私の首を絞め上げなから、どこか悦に浸るとーか君の表情を見ていたら、一気に覆された時の絶望をもっと強く想像することが出来て、快感で涙が滲んだ。

海の上で次第に静かになっていくとーか君を黙って見続けるのは、最高に気分が良かった。

「あは…アンタが悪いんだよ。バーカ。ざまぁみろ。」