運がいいとか悪いとか…


有名なあの歌を聴く度、いつも母とダブらせては涙した。

そんなことは非常識だと頭で判ってはいても、母が末期癌と知ったその日、私はすぐ仕事を辞めた。

母に残された日々を、ほんの少しでも一緒に居たかったのだ。

そして、間もなく母が亡くなったあとは、完全に脱け殻になってしまい、本当にもう何も出来なくなった。


今でこそ髪だって伸びたものの、いつも、私の長い髪を好きだと言ってくれていた道哉のことを考える余地さえもなく、突然スキンヘッドにしてしまったし、全く家事が手につかなくなった時期もある。


それこそ、一時は道哉と寝室も別にして、昼も夜もただ泣いてばかりいた。

しかし、道哉はそんなダメになってしまった私の全てを受け入れ、許し、ただそっと抱き締めてくれた。

道哉の静かで深い愛情が私を救ってくれたのだ。