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 オウガは謁見の間にて騎士の礼おとりその場に片膝を付くと、頭を垂れた。目の前にはこの国の王であるファルガルが豪華な玉座に頬杖をつき、騎士の礼をとり頭を垂れるオウガに、いやらしく笑いかけている。

「オウガよ。よく聖女を手なずけてくれた」

 はあ?

 手なずける?

 王が何を言っているのか分からず変な声が出そうになったが、ひたすらそれを我慢した。

「隣国アリエントとの戦が、いつ起こるとも分からない。それまでに聖女に力を使うようにと説得させよ。この国の勝利は聖女の力なくしては勝ち取れぬ。良いなオウガよ」

「……仰せの通りに」

オウガは王に頭を垂れたままの状態で答え、もう一度騎士の礼をとると謁見の間を後にした。





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 オウガが王に呼び出され、セリカは部屋の中をうろうろとしながら、オウガの帰りを待っていた。
 
 一体何の話があると言うのか……。

 ソワソワと落ち着かないセリカの耳に扉のノック音が聞こえてきた。扉を開けると、扉の前で待つ人物へと向かって満面の笑みを向けた。

 しかし、そこに立っていたのはセリカにとって予想もしていない人物だった。

「ファルロ殿下」

 ファルロは部屋から飛び出してきたセリカの姿に目を見開き驚いていた。こんなに嬉しそうな顔をしたセリカを見たことがなかったからだ。

「セリカ嬢……」

 ファルロはそんなセリカを優しく抱きとめた。

 
 なに?

 ファルロ殿下?

 ファルロの腕の中でセリカはたじろいぐ。どうして自分はファルロに抱きしめられているのだろう?

 セリカは腕に力を込めてファルロの胸を押し返す。

 離しなさいよ。

 セリカの瞳が赤く染まり、赤く燃えるその瞳をファルロがのぞき込んだ。

「くくくっ、潤んだ瞳が可愛らしいな。オウガにはあんな風に笑うのか?オウガが死んだらお前はどんな風に泣くんだろうな?」



 えっ……。


 オウガが死ぬ……。


「殿下……あなたは、オウガに何をするおつもりですか?オウガは今どこにいるのですか?」

「さあ、どこにいるのかねえ?」

 ぐっ……。

 セリカは奥歯を噛みしめ体に力を入れる。

 ふざけているの?

 何を考えているのか、全く分からない。