ケータイ小説 野いちご

冴えない私の変身計画~浮気男に一泡吹かせてやろうじゃないの!!

樹と遭遇


 
 *

 沙菜が大変身を遂げてから三週間が過ぎていた。

 いつものように領収書の整理をしていると営業部の領収書が出てきた、それは何とも雑な物で、名前は入ってないし紙は折れ曲がっていて端が切れている。一体どういう状況になるとこのような領収書が出来上がるのか?これは絶対にあいつの仕業に違いない。沙菜は確信を持っていた。

 沙菜はイライラしつつも領収書を処理していくが、さすがに名前が入っていない物に関してはどうにも出来ず「はー」っと溜め息を付いた。

 仕方が無い、あいつの所に行かないとダメか……。

 この時間なら樹は営業に出ているはずだから、営業部に残っている人に渡してくればOKでしょう。沙菜は立ち上がると蒼士の元へと向かった。

「部長、これを営業部に持って行くので少し席を外します」

「……営業部……大丈夫なのか?」

 前髪で隠れている部長の瞳がジッと沙菜を心配そうに見つめている。そんな蒼士に沙菜は微妙な表情を見せた。

「今の時間ならあいつも営業に出ている時間ですし、ちょこっと行って営業部の誰かに渡してきます」

「そうか……俺が持って行こうか?」

 蒼士の提案に沙菜は首を左右に振った。

「大丈夫です。もしあいつに会ってしまったとしても、ここは会社ですし酷いことは言ってこないと思います……でもまた何か酷いことを言われた時は慰めて下さいね」

 冗談ぽく言って沙菜がニコリと微笑むと蒼士から「あ……ああ」という返事が返ってくる。沙菜にはその返事だけで良かった。蒼士が近くで見守っていてくれるなら勇気が湧いてくる。

最近は樹へ一泡吹かせたいという感情も薄れつつあり、それよりも蒼士に近づきたいという気持ちの方が強かった。

 一度、樹とはエレベーター前ですれ違ったがあの時は逃げるようにその場を立ち去ってしまった。一泡吹かせてやろうと思っていたのに、いざあいつの前に立つと何も言えなかった。という経緯もあり、樹に一泡吹かせる作戦は保留となっていた。






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