ースタスタ
 
私は周りをきょろきょろ見ながら廊下を歩いていた。
私、南見 朱里は、一ノ瀬 蒼を探して、放課後の学校を歩き周っているのだ(たまに図書室にいるという情報を聞きつけたので)。理由はただ一つ、陽と如月の恋の応援をしてもらうため。
 
先週の金曜日、陽に如月のことを好きになったと報告してもらってから、如月がどんな奴なのか、少し観察させてもらっていたのだ。すると、如月も陽のことを好き、ということが発覚した。なぜなら如月は、陽と話す時だけ口数が少ないし、目は絶対合わせないし、かと思ったら授業中、陽の方を見ているからだ。サッカーの試合で、陽が倒れた時も私と華が保健室に行ったら、如月がいた。ここまで来たら間違いない。
 
そこで、一ノ瀬にそのことを言い、二人で協力して、如月と陽を何とかくっつけようという作戦だ。
 
如月や陽にそのことを言っても、そんなわけないじゃんと返されるのが目に見えている(あの二人、相当恋に鈍感な様子なので)ので、二人に話すのは諦めた。
 
そんなわけで私は一ノ瀬を探していた。さっき確認したけど、もう一度図書室を見てみると、隅っこに座って難しそうな本を読んでいる一ノ瀬を見つけられた。


「ねぇ、ちょっといい?」


私が聞くと、ちらっと私の方を見て


「何?」


とめんどくさそうに聞いてきた。
ちょっと控えめに話しかける。


「こんにちは。あのー、ちょっと時間もらってもいい?」

「よくない。」


え、こんな風に返す人初めて見たんだけど。
でも、ここで引き下がるわけにはいかないし、もういいや、いきなりだけど本題入っちゃお。


「ぱっと済ませるから。単刀直入に言うとね、如月と陽の恋の応援をしてほしいな、って思ってそれを言いに来たんだけど。」


私は、一ノ瀬の肩が一瞬びくっとなったのを見逃さなかった。


「一応自己紹介しとく、私は陽の友だちの朱里。でさ、如月は陽のことが好きだよね。」


一瞬、動揺したようにも見えた気がするけど、一ノ瀬は本をパタンと閉じ、落ち着いた声で言った。


「なんで君が知ってるのかは分からないけど、柊樹は桐生のこと好きで間違いないよ。つか、本人が言ってたし。で、なんでこんなこと聞くの?」


こいつのことを信用してもいいだろうか。少しためらったが、他に方法はないんだし、賭けてみよう。


「最初に言っとく、今から私が言うことは絶対ばらさないでね。これだけはお願い、約束して。」


一ノ瀬がコクリとうなずいた。