えっ?

 家??

 家って――八乙女くんの家!?

 えーっ、どうしよう!

 八乙女くんの家に、誘われちゃったよ!

 何で!? どうして!?

 うわー、何て返事しよう!

 いや、待てよ。

 そこで私ははたと考え直した。

 八乙女くんは、私のことを友達としか思ってない。女の子として意識してないんだ。だから平気で家になんて誘えるんだ。きっとそう。

 だから私も、変に意識なんてしちゃダメだ!

「うん。いいよ、もちろん」

 私は意識なんて何もしてませんよ、という感じで返事をした。

 ホッとした顔をする八乙女くん。

「よし、じゃあ決まりだな。若菜さんに見せたい本とかもたくさんあるし。若菜さん、嬢ヶ崎先生の本、気になるって言ってたよね」

「うん、ありがとう。楽しみ」

「それじゃあね」

「うん」

 手を振り、バタンと玄関のドアを閉める。
 と同時に、私は大きなため息をついた。

「ふー……」

 顔が茹で上がったみたいに熱くなる。

 どうしよう。

 デートじゃないっていうのは分かってはいるけど……八乙女くんの家だなんて!


 ***

 八乙女くんの家は高校からほど近い丘の上にある一軒家で、白い壁とバルコニーがキレイな可愛いおうち。

 純和風の私の家とは正反対だ。いいなあ、こんなに可愛いお家に住めて。

「お……おじゃまします」

 私はソロリソロリと八乙女くんの家に上がりこんだ。

 バラの花や白いレース、可愛い天使の絵が飾られた玄関。

 うわー、なんだかすっごくキレイで可愛い玄関。それに何だかとってもいい匂いがする……。

 カチカチに固まっている私を見て、八乙女くんはクスリと笑った。

「そんなに緊張しなくてもいいよ。今日は両親もいないし」

「えっ」

 思わずカバンをボトリと落とす。

 家で二人っきり――。

 そ、それって、ラブコメで定番のやつ!?

 ……って、いやいや、私と早乙女くんはただの友達! 変に意識しちゃダメだっ!

「……ま、姉ちゃんたちはいるけどね」

「そ、そうなんだ」

 ホッと胸をなでおろす。
 そうだよね、二人っきりなわけないか。よけいな心配しちゃった。