「高校時代に依子さんの高校で体育を教えていました新垣と言います」


先生は深々と頭を下げ、依子と龍に視線を向けた。


そして、会場を見渡すように背筋をぴんとして話し始めた。


「本日はお招きいただきましてありがとうございます。自分の教え子が結婚するというのは本当に教師として嬉しいことであり、誇らしく思います」


先生は時々天井を見上げて、何かを思い出すような表情をした。



「スピーチということなので、高校時代の依子さんについて少しお話したいと思います。依子さんは、正直申しまして・・・手のかかる生徒でした。授業中はやる気を見せないし、学校もよく休んでいました。そんな依子さんに変化が見られたのが、高校2年の後半でした」


苦笑いを浮かべる依子。

龍も、依子の頭を突っついたりしてとても仲良しだ。


「それまで、声をかけても笑顔を見せることのなかった依子さんが、毎日笑顔で楽しそうに学校へ来るようになり、欠席はほぼゼロになりました」



先生は、私とゆかりの方に視線を向けた後、依子を見た。



「ちょうど、その時期に・・・依子さんは隣にいる龍君と出逢ったんだと後から知りました。依子さんは、同じ時期に2人の親友も手に入れました。愛する人と親友を手にした依子さんは、別人のように明るく、元気になり・・・今でも友達と手を繋いで廊下を走っていく姿が目に浮かびます・・・」




いきなり指名されたとは思えない先生のスピーチ。



私もゆかりも涙が溢れた。