跪く王子にロマンを感じない女子はいなんじゃないだろうか?

 ……語弊があるかもしれないけど、誰しも一度は憧れるだろう。跪いたイケメンがパカッと小箱を開く。するとそこには、キラキラ輝くダイヤモンド。

 まぁプロポーズではなかったし、お給料三ヶ月分の物なんて準備されてなかったけれど(代わりに手の甲に余計なことをされた気がするけれど)。

 少し前なら、白豚が眼下にいた所で嫌悪しか抱かなかっただろう。だから、私も何とも思わなかったのだが。その時はまだ子白豚のはずなのに、妙にドキドキしてしまって。

 そんなことがあって、前世ならカレンダーを一枚捲った頃、私は油断していた。そのロマンは初めてだから有効なのであって、何度も経験すれば慣れてしまうものだと思っていたのだ。

「僕と一緒に踊ってくれませんか?」

 金髪のイケメンが微笑を浮かべて、私に手を伸ばしてくる。

 だけど私は、とある症状に見舞われていた。

 目眩。動悸。口渇。

 まばたきを繰り返し、ハクハクと口を動かすしか出来ない私に、王子はその体制のまま小首を傾げた。

「これでもダメ? なかなか『いけめん』の所作は難しいね」