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「……香田さん、さっきからすっげぇ頬が緩んでんだけど」



「夏川よ、なんて野暮なこと言うんだ。

ゆんは万里先輩と連絡先を交換してにやにやが止まらないんだよ、わかる?」



「はあ……、付き合う前はあんなに焦れたくせに」


「まあ確かに、
見ててちょっとリア充すぎて見てられないよね」




スマホの画面を見て、頬がゆるゆるのわたしには夏川くんと胡子ちゃんの会話は聞こえない。




とある日の昼休み。

紅葉の季節だというものの、あたたかな陽気が窓から差し込んでいる。


クラスもいつもどおり賑やかだ。



かくいうわたしは、
さっき交換したばかりの万里先輩の連絡先をじーっと見て幸せに浸っている。



経緯はというと、

万里先輩はこのあいだ落として携帯が壊れたらしく、新しく買い換えたんだってお話を聞いていたとき。



「ゆんちゃんスマホ貸して」と言われて渡せば……、万里先輩の連絡先がわたしのスマホに鎮座していたのだ。


びっくりしているわたしに、先輩はなんでもなさそうに言う。


『電話でも、メッセージでも、なんでもして。ゆんちゃんならなんでも嬉しいから』




……先輩は、やっぱり女子脳がわかってる。



言って欲しいこと、ぜんぶ把握してる。