思えばここまでの人生が順風満帆過ぎたのだと思う。

私、古道愛菜(こどうあいな)三十歳。
都内の超有名大手企業に大卒で入社。自由な社風が肌に合い、配属された販促グループで目覚ましい活躍を見せてきた。さらには根が真面目なせいか、人一倍努力し、取り組んだ企画がいくつもヒット。いつしか、グループ内では出世街道のスタ―社員扱いとなっていた。

もちろん、女としても手を抜かない。仕事の合間にジムに通い、女らしいメリハリスタイルをキープ。ネイルもヘアも万全、清潔感と美しさをキープ。まあまあ人並み以上と自負のある容姿は、日々のスキンケアと、隙の無いメイクでばっちりキープ!
たゆまぬ努力で、私は販促グループの花、才色兼備の女として絶頂を迎えていたのだ。

……まあ、正直に言えば、少々天狗にはなっていたわよ。
私が五分で終わる作業に一時間かける人間は、怠けているように見えたし、多少なりとも冷たい態度を取ったと思う。露骨に嫉妬されれば、ふふんと笑って、腹の中で馬鹿にしてやった。だって、私の仕事の結果は、私の努力の結果だもの。運やタイミングを掴んだのも、周囲にアンテナを張り巡らしていたから。ズルをしたわけでもなんでもない。

容姿を褒めてくる男たちには『当然』という態度を取った。他の女子社員がムカついていたって気にしない。セクハラともと思わない。私は相手に印象よくしようと、仕事と同じくらい努力しているだけ。お高く留まって見えたって仕方ないじゃない。私より美人で仕事ができるようになってから陰口叩けってんだわ。

そんなふうに三十の年まで、意気揚々格好よく、少々偉そうに調子に乗って生きてきた。