「……は、はちじゅう…に点……?」
数学の答案用紙を手にして私は驚愕した。だってまさかそんな。念のため確認したところ出席番号も名前もちゃんと私のものだった。
数学でこんなに赤い丸を見たのは初めてじゃないだろうか。もちろん歴代最高得点である。
「あ、彰くん!!」
「その様子だと大丈夫だったみたいだね」
隣の席に体ごと向けて話し掛けると、彰くんは安心したように笑った。
テストの構成は彰くんの言った通り、問題のほとんどが基本問題で応用は残りの数題に限られていた。頭のいい人はテストの傾向と対策がしっかりと取れているんだと知った。これからは見習おうと思う。
「彰くんのお陰だよ。本当にありがとう」
「そんな事ないよ。問題が解けるようになったのは本人が努力した結果だから。でも栞里が数学苦手なんてちょっと意外だったな」
「……そう?」
「うん。苦手なものとかないのかと思ってた」
「……それは彰くんの方でしょ」
「俺だって苦手なものくらいあるよ」
このパーフェクトボーイに弱点があるなんて考えられない。
「じゃあ彰くんの苦手なものって何?」
「ははっ。それは内緒」
聞いても笑ってはぐらかされるだけだった。まぁ確かに、自ら弱点を晒す人なんていないよね。
次々に返ってくる答案用紙を受け取る。他の教科は特に心配する必要はなかったので、私は無事に夏休みという楽園への切符を手にする事が出来たのだ。