私は車いすに乗せられて、産婦人科の個室に移動した。
その間も律樹は私の荷物を持ち、車いすを看護師に押されている私の点滴まで持ってくれている。

自分では全く妊娠に気づいていなかった。
元から生理が不順で、最近、正直自分の体調どころではなかった。

あの夜に授かった命・・・。


この命が律樹の将来を、これからの未来を邪魔してしまう・・・。


でも、大好きな人との子だ。
私だって、この命の芽生えがうれしくないわけがない。

「季里・・・」
私の瞳から次々に涙があふれるのを見て律樹は体調を気遣ってくれる。
「どこか痛いのか?」
その言葉に私は首を横に振るしかできない。