「・・しちゃったね」

「やっちまったな・・」

 頼りない街灯は赤い顔を隠せて丁度いい。きっと僕達は今お互い真っ赤な顔をしているから。

「私達の初めてのキスだね」

「あ、ああ、そうだな」

「え?何そのリアクション」

「な、何がだ?別に普通だろ」

「もしかして初めてじゃないの!?」

「・・・」

 真っ直ぐ睨んでくるハルカからつい眼を逸らしてしまう。

「カナタ!こっち見て!」

「いや、なんてゆうか、アレは事故と言うか・・」

「どうゆう事!?」

「あ〜、その、綾に不意をつかれたってゆうか、騙されてとゆうか・・」

 結局ハルカに全てを白状させられて、石で出来たベンチに正座をさせられた僕は15分間説教をされた。

「バーカバーカ!カナタのバーカ!」

「小学生かよ・・」

「何!!」

「スミマセン、ナンデモアリマセン」

「もう・・しない?」

「当たり前だ、ハルカ以外としたいと思わないよ」

 捨てられた仔犬のような目で見つめられると、庇護欲が刺激されて困る。

「なら許してあげる」

「ほんとにハルカ以外としたいと思わないから」

「わ、わかったから!恥ずかしいでしょ!」

 照れてあたふたするハルカを抱き寄せる。相変わらずベンチに正座をした体勢のままだから、側からみれば滑稽だろうが構わない。

「カナタ、これからどうする?」

 ハルカの言う『これから』の意味は今日の事ではなくもっと先の事を指している。

 正直に言えば僕は恋人や付き合うとゆうのは少し違う気がしていた。それは多分、周りからの認識の事であって誰にも話す訳には行かない僕達の関係を表す呼び方では無い気がした。

「僕はずっとハルカの側に居たい、ハルカに側に居て欲しい」

 僕達の関係に呼び方がなくても、一緒に居たいとゆう気持ちに変わりはない。

「私も、カナタとずっと一緒に居たい」

「いいのか?」

 きっと楽しい事ばかりではない。いや、辛い事の方が多いだろう。

「カナタと一緒なら大丈夫。いっぱい辛い事もあると思うけど、カナタが居てくれるなら」

「わかった。なら、ずっと一緒だ」

「うん!」

 遠くから花火の音が聴こえてくる。

 夜空に咲く大輪は見えなくて、真っ黒な空を赤や黄色、青、緑に明滅している。

「花火、始まっちゃったね」

「そうだな」

「見えないね」

「ああ、来年はちゃんと見に行こうな」

「うん、ごめんねカナタ」

 明滅している空を見上げていた僕の背中にハルカがもたれ掛かり、体に腕を回した。

「何がだ?」

「・・・ううん、何でもない」

「変な奴だな」