「ただいま」

 綾と契約について詳細を詰めていると、いつの間にか外は夜の闇の中だった。

 急いで帰ったものの、見上げたアパートの僕達の部屋には明々と電気が付いていた。

「おかえり〜、お〜そ〜い〜!」

「わるい、すぐ御飯支度するから」

 頬を膨らませたハルカに言いつつ、荷物を置いてキッチンに立った。冷蔵庫から適当に野菜や肉を取り出し、ひと口大に切ってから温めたフライパンに入れて行く。

「どこ行ってたの?」

 手早く炒めていた僕の肩にハルカが後ろから顔を乗せて来る。耳元で聴こえて来る声は怒っているとゆうより拗ねた色の声だった。

「ちょっとな」

「ちょっとじゃわかんないよ!誰と何処に行ってたの!」

「ひとりで駅ビル行ってうろうろしてただけだって」

「ほんとに?」

「ほんと。ほら、もう出来るから冷蔵庫の冷やご飯あっためて」

「む〜・・」

 不満そうな唸り声を漏らしながらもハルカは冷蔵庫からタッパーに入った御飯を取り出して、電子レンジを操作する。

 肉と野菜に火が通ったのを確認してから皿に盛り付けた。有り合わせで作った所為で彩りがイマイチなのは諦めよう。

「いただきま〜す」

 少し間延びした声でハルカが手を合わせる。同じ様に僕も手を合わせてから、おかずに手を伸ばした。

 いつもの様にだらだらと内容の有って無い事をハルカが話して、僕はそれに相槌を打ったり『そうなんだ』とか返しながら晩ご飯を終わらせる。

「先に風呂入っていいよ」

「は〜い」

 食器を片付けている間にハルカに風呂に入らせてから、ソファーに座ってテレビの電源を入れた。

 去年の年末にあったらお笑いの大会で優勝したコンビがネタを披露し、爆笑が起こっている。

『まだハルカには言わない事、こちらから言うより自然に噂でハルカの耳に入る方が信憑性が高いから』

 思い出すのはついさっき交わした綾との【恋人契約】の注意事項。

『それと、いきなり近過ぎる距離感だと怪しまれるから、徐々に距離を詰めていく事』

 事細かな制約を色々言われた僕が、その時点で既に少なからず後悔の念を抱いていたのは言うまでもない。

『にしても、僕が綾と付き合ってるって周りは信用しなくないか?』

『どうゆう意味?』

『釣り合わないと思われるだろ』

『はぁ・・』

『貴方は毎日、それこそ誰よりもハルカを見ているのじゃないの?』

『まあ、そうだろうな、一緒に暮らしてるし』

『ならばハルカが世間一般的に見てもかなり優れた容姿をしているのはわかっているわよね?まあ、あの子は内面も人に好かれるとゆうのは今は置いておくけれど』