「寝ている人は起きてください」



数学教師の呆れた声が教室中に響き渡るけれど、そのくらいで起きる人はいない。

いまは4p。空腹と睡魔が同時に襲ってくる時間で、それだけでつらいのに、黒板には暗号のようなものがたくさん並んでいて、窓から差し込む光と鳥の鳴き声が睡魔を誘う最悪の環境。



目線を窓の外から黒板に戻して、板書して、あと20分で終わるからと喝を入れる。




「次の問題は応用です。花野くん解けますか?」



"花野"というワードが聞こえてきて弾かれるように顔を上げた。先生が前にでて答えを書いてください、と言っているからまたか、と思った。

立ち上がる音が聞こえて、黒板の前に、花野くんが立つ。細くてかっこいいし、授業中だからか、黒縁メガネもしていて、かっこよさが引き立っていた。