魔王がいなくなって、早三ヶ月が経ちました。


今まで自己満足で勇者ごっこをしていた山岡さんは、何かに取り憑かれたかのように自分を鍛える事に取り組み、メキメキと強くなって行ったのです。


……本当に取り憑かれていないか、前科があるだけに怖くもありますが。


そして、魔王の吐息で吹っ飛ばされたのぼるは、まだ帰ってきません。


もしかして、本当に死んでしまったのではないでしょうか。


あんなやつでも、死んだかと思うと寂しいもんですね。


お店の掃除をしながら、ぼんやりとそんな事を考えていた時です。


店のドアが開き、お客さんが入って来たのです。


「あ、いらっしゃいませ……って、あれ?」


朝早くには珍しいお客さんが、そこに立っていたのです。


「あ、あのさ……ちょっといいかい?」


真希さんが神妙な面持ちで、私を見るなり駆け寄って来たのです。


獣が獲物を見付けて飛び掛かるような勢いで私に迫ります!


「な、な、なんですか一体!」


これはただ事じゃありませんよ!


「どうしよう。なんかおかしいなーと思ったら、やっぱりおかしくてさ! デキちゃったみたいなんだよ! 子供が!」