Kento Side

9人の始末屋の中に1人、所在も分からないような
むさ苦しい男たちと一緒に暮らす女の子なんて、
ドラマでも起きないようなこの状況で、
俺自身が彼女にしてあげられることは手料理を振る舞うことだった。

ここは月に3回、CLUBとBARとしてお店を開いている。
その料理を担当するのが俺だ。

ある日いつものように10人での食事を済ませた後にお皿を洗っていたら、
天咲が何か言いたげにこちらを見る。

「…どうした?」
天咲「私も手伝っていい?」
「ふふ、もちろん。ありがとう」

正直びっくりした。でも、嬉しかった。

「お皿洗うの、好き?」
天咲「好きじゃない」
「素直だね笑」
天咲「でも、健斗の作る料理は好き」
「嬉しいな」
天咲「だから、ほんの少しのお礼の気持ち」

真っ直ぐな瞳が、俺を捉える。

天咲「いつもありがとう」
「少しは天咲の力になれてるかな?」
天咲「私の、力に?」
「少しでも、この世界も悪くないもんだなって、
思ってくれるといいなって思いを込めて作ってるんだ」

伝わってたかな?
すると、少し俯いた天咲の目から雫が落ちる。