「こんなものかな」

段ボールに納まって運ばれてきた荷物のほとんどは衣類だ。秋冬物がメインなので、結構かさばる。春夏物はまだ実家に置いてある。

引越し業者に運んでもらった身の回りのものをチェストに整理し、私は引越し作業をひとまず終えた。ここは夫婦の寝室。
リビングに戻ればダイニングテーブルのセットと、大きな革のソファ。テレビにパソコン。キッチンの食器棚には食器が一式と調理器具がずらり。暮らすための家財はもうすっかり揃っている。

私は電気ポットでお湯を沸かし、ダイニングテーブルでお茶にした。
土曜の午前中、私はこの新居にひとりで引っ越してきた。
佑と暮らす新居のマンションは広々としていて、やっぱりちょっと豪華すぎる気がする。佑がセキュリティ的にここがいいって言うから納得したけれど、普通の若夫婦が住むにはちょっとした金額の賃料なのも知っている。

それはさておき、今日からいよいよ同棲がスタートなのだ。
とはいっても、当の佑は昨日から明日まで関西に出張だ。佑は副社長。今回の出張も竜造おじさまの名代らしい。

佑の荷物は一昨日の夜に運び込むだけ運び込んでおいたらしい。実際、玄関に入ってすぐの部屋には佑の荷物であろう段ボールが積み上がっている。
そんなわけで正式に同居スタートは明日佑が帰ってきてからになる。

ティーパックの紅茶をすすりながら、寝室とのドアを開けっぱなしにしてしまったと気付く。
閉めに行って、中にあるものについつい目がいった。それは先ほどの荷ほどきの時も精一杯目を逸らし続けたものだ。

「ダブルベッド、よね」

ひとり呟く。そう、寝室にはクイーンサイズのダブルベッドが鎮座しているのだ。