屋上までなんとかたどりつくと、

バタンと背中で屋上のドアを閉めて、
肩で大きく息をする。


こ、こんな、180センチを
超えてそうな大男を

よく、私もここまで
引きずってきたもんだ。

はあ、はあ。

く、くるしい。

息が苦しい。

心臓、潰れそう。


すると、
強風吹き荒れる屋上で、

フェンスを背中にしゃがみこんだ
「遥ちゃん(仮)」が私を見上げる。


「やっらしー。
こんな、人のいない屋上につれてきて、
俺になにをする気ですかー?」



「そ、そんなことより!

ど、ど、どこで、鈴之助のこと、
知ったの!」


動揺のあまり、声が震える。


「うちの親がテレビ見て
すぐに鈴之助だって気がついて、
お前の親に電話してた。

あと、ついでに言っておくと
俺もあの事務所に所属してるから、
間違えない。隠しても、無駄」


……鈴之助に気が付いて、
うちのお母さんに電話?

遥ちゃん(仮)も、
鈴之助と同じ事務所に所属?


想定外の情報が多すぎて、
頭のなかが
整理できない。


と、とにかく
本当に鈴之助のことを知ってるんだ。


ちょっと待って!

それじゃ、遥ちゃん(仮)も
芸能人ってこと?

で、でも、それよりも、今は!


「お願いします」


コンクリートのうえに
正座して、三つ指ついて、頭をさげる。