「そんなもん、はいたことねえわ!」


む、むむむ。


「お前、マジでそれ言ってる? 
本気で覚えてねえの?」


「いや、私のはるかちゃんが、
どこかで他の誰かと
入れ変わってしまったのなら、わかる」


すると、「遙ちゃん(仮)」が、

机のうえに
開かれたままになっている雑誌に
視線を落とす。


「おっ、俺もこれ見た。
すげえな、お前の弟のすず……ムググっ!」


遥ちゃんの口をふさぐと、

ずるずると遥ちゃんを引きずるようにして
教室の出口へと向かう。


「やだっ! もう、懐かしいなっ! 
遥ちゃんったら!
逢いたかったよっ!

ちょっと、久しぶりに、
ふたりで話そうっ、ね! ねっ!」


教室中の視線を集めているのを
背中に感じながら、

「遥ちゃん(仮)」を
力づくで教室から引きずりだした。