その翌朝。


「おはよ、凛花」


「あ、うん」


朝陽のなかで
黒髪をさらりと揺らし
眩しい笑顔をみせる遥先輩に

ドキリとする。


「あれ、凛花、メガネ忘れてる?」


「あ、うん、いいや、
今日はメガネなしで行く」


ホントは裸眼だし。

遥先輩の顔を見ないようにして
スタスタと歩き始めたところで

遥先輩に止められた。


「ダメだよ、取りに帰るぞ」


「えっ、いいよ」


「ダメだよ、取りに帰る」


そう言って、

ぐっと私の鞄の持ち手をつかんだ
遥先輩に、

下を向いたまま
頭を横に振る。


「どうした、凛花?」


「取りに、…帰らない」


「メガネ、壊れたのか?」


「その…
メガネ、やめようかな、と思って」


「なんで?」


背の高い遥先輩が
少しかがんで、

漆黒の瞳を甘く潤ませ

私の顔をのぞきこむ。



くっ……


なんて破壊力。