会いたかった。

だから、会いに来た。


複雑に入り混じる感情を落ち着かせて見つめる彼は、…やっぱり綺麗。



「朱里、柚葉を助けてくれてありがとう。兄としてお礼を言うよ」

「お兄さんって、紫月さん…だったんですか…っ」

「…あれ?愁世、朱里にバイオレットレモネードを出してるの?」

「はい。わたくしの気まぐれでございますが」

「そう。あの味は愁世にしか作れないからね」



店員さんの顔を見ることはなく、バイオレットレモネードを見て口角を上げた紫月さん。

…店員さんは聞かれるのを分かっていたかのように落ち着いて答えている。



――…優しい表情をしている、かと思えば



「氷雨、愁世。朱里をもらうよ」

「…紫月様、」

「あぁうん、もちろん柚葉も」

「…おい紫月、今日は元々…」


「なに?聞こえないな…!」



全員が固唾を飲む唯一の威圧を

誰も足を踏み入れることの出来ない凄みを


全身に纏って、微笑むのだ――…。