松菱くんが学校へ来たのは、お見舞いから二日たった木曜日だった。次の授業までの十分休憩に、松菱くんは話し出す。



「風邪はすっかり治ったけど、このクラスの空気は最悪だな、ひそひそ話やがって」



 その悪い空気にあてられたように、松菱くんはぐったりと椅子に背中を預けて、天井を仰いだ。



「ねえ、松菱くん」


「なんだ?」


「こういうとき三木さんならどう言うと思う?」わたしは不意に気になった。


「そうだな」


少し考えた後、あの人変だからなあ、とまた更に悩んだ。


「『冷たい視線も熱い視線も大して変わらねえ、俺が注目を浴びてることには違いないからな』とか、言いそう」



わたしたちはクスクスと笑い合う。



「確かに、言いそう」