突然の「ただいま!」の声。
俺の誕生日に意外な来客が来た。
「父さん!お帰り。どうしたの?」奏悟の声がした。帰って来たのは父さんだった…久々に見る父さんの顔。最近思い出せていない顔を俺はそっと見た。
「なにって、この前の夕紀の月命日に来れなかっただろ?今日、誕生日だったから休みとって戻ってきた。」そう言う父さんは何も変わっていなかった。少し焼けた肌に白い歯。低めの声。俺が覚えていた父の特徴…
声をかけたかった…お帰りって言いたかった…
父さんは靴を脱ぐと仏壇がある和室に入って行った。様子を見ると、「ただいま。夕紀、母さん。」優しい声をしていた。