屋上から教室に戻る最中、拓ちゃんの様子が少しおかしいような気がした。
ふたりの時はいつも口数が多いのに、何も話さず、考え込んでいるみたいに見えた。
「拓ちゃん?」
気になって顔を覗き込むと、拓ちゃんがはっとした様子で顔を上げる。
「どうした?」
いつも通りの笑顔に、気のせいだったのかなと思い首を横に振った。
「ううん、何もない」
——キーンコーンカーンコーン。
あっ、予鈴……!急がなきゃ……!
拓ちゃんと教室に戻ると、弥生くんと華生くんはまだ戻ってきていなかった。
けれど、一番気まずい人物の姿を見つけ、体がこわばる。
か、海くん……。
席に近づくと、海くんが私たちに気づきにっこりと微笑んだ。