「美透ちゃん、体育館行こうー!」

「うん!」


廊下に出ると、肌を突き刺すような寒さ。

寒~っ、と騒ぎながら、クラスの友達と一緒に体育の授業へ向かった。


翠さんは最近学校に来たり、来なかったりを繰り返している。


「美透ちゃん、よかったら一緒に食べよ」

「俺も音楽好きなんだけど、普段どんなの聴くの?」


翠さんがいない日。

いつもの階段は冷えるため、仕方なく教室でお弁当を広げた。

すると、ライブを見に来たクラスの男女が話しかけてくれた。


「美透ちゃん、クノさんとバンドやってるって知らなかったよ。すごーい!」

「ライブかっこよかった。別人みたいだったよ!」


穂波さんと一緒にいる派手女子たちも時々話しかけてくれる。

初ライブを見に来てから、彼女たちの態度は変わった。


逆に、穂波さんがクラスで孤立しているように見えた。


なんとなく気になり、穂波さんを眺めていると派手女子たちが教えてくれた。


「噂で聞いたんだけど、穂波ちゃん……中学の時いじめやってて、超嫌われてたんだって」


私と穂波さんは、同じ中学出身の友達がいない、という共通点があった。

私は他のクラスに同じ中学の人が少しいるけれど、穂波さんには全くいないらしい。


穂波さんの住んでいるエリアは都会で高校も多い。

自転車と電車で2時間くらいかかるし、わざわざ遠いこの高校を選ぶ人はいないだろう。


穂波さんには、新しい環境で高校生活を送らなければいけない事情があったんだ。きっと。


かと言って、彼女に避けられている状態の私には、何もできない。