ケータイ小説 野いちご

初恋エモ

#1 透明ボーイアンドガール
3






「35円のお返しです。ありがとうございました」


ぺこりと頭を下げながら、次のお客さんのカゴに手をかける。

お肉や野菜、冷凍食品のバーコードを次々と読み取る。


バイトを始めて1ヶ月。研修期間が終わり、時給も上がった。


夕方以降は苦手なおばちゃんパートが減るため、気を楽にして仕事に取り組めていた。


あれ以来、クノさんと会う機会はない。

穂波さんたちは時々連絡を取っているらしいけれど、彼は女遊びやバイトで忙しいらしく、あまり構ってくれないらしい。

ミハラさんは校内ですれ違うと、いつも手を振ってくれる。いい人だ。


「お待たせしました。レジ袋は必要ですか?」


次から次へと、カゴに詰め込まれた食材を清算していく。

お客さんの顔をまともに見れないから、カゴの中の食材だけにに視線を向ける。


次のお客さんは、お茶と惣菜のから揚げ。

お茶のバーコードを読み取り、から揚げのパックに手を伸ばす。


「ん?」


おかしい。

このから揚げ、午後6時調理なのに半額シール貼られてる。

もうそんな時間だっけ?


時計を確認すると、まだ19時半。早くても3割引きなはずだ。


もしかして、この人。

他の総菜から勝手にシール張り替えた?


「あの……この商品。って、あ!」


顔を上げた瞬間、大声をあげてしまった。

視界に入ったのは、フードをかぶったパーカー姿の男子。


もとい、クノさんだった。


「おっ、久しぶりじゃん。ここでバイトしてるんだ」


なぜか得意げな顔で、私を見つめている。

余裕たっぷりな態度に少しイラッとした。


「これシール違いますよね。店長呼びます。ちょっと待ってください」


早口でそう伝え、レジ横のインターホンに手をかけようとしたところ、


「ちょ、ちょっと待て。お前、今日はやけに挑発的じゃん」


さすがの彼も慌てていた。

普段なら人に反抗できない性格だけれど、今は時給を稼いでいる身だからお店の方針に従わなければいけない。


「いやーそのー金なくて。でもできたてのもん食いたくて。たまたまレジにお前見つけて、そのぉ、見逃してくれそうだなぁって」

「見なかったことにしますから、元に戻してきてください。シールも」


なんとクノさんは不正を見逃してくれると思い、わざと私のレジに並んだらしい。

確信犯だった。やっぱり最低な人だ。


ちぇ。軽い舌打ちを残し、彼は総菜コーナーへと戻っていった。


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