レコーディングや新しい曲の準備をしているうちに、私は高校二年生に、クノさんは三年生になっていた。

CDは3曲入りのEP。これから手売りしていくことに。

リードトラックは『ブルー/イエロー』で、クノさんの叔父さんがライブ映像を編集したMVを作ってくれた。


「これ、私だってバレないでしょうか……」

「大丈夫でしょ。お前髪ぼさぼさで顔見えてないじゃん」


ぼさぼさって。

ライブ中は三つ編みほどけって言ったのはクノさんですからね!


MVを動画サイトにアップロードし、SNSで広報する。

たくさんの人に届けばいいな。


「あ、ミハラさんが見てくれたみたいです」


すぐにミハラさんから「めちゃくちゃかっこいい! 今度CD買うね」とラインが来た。


パソコンをいじっているクノさんは「ふーん」とそっけない返事をしてから、

「お前、ミハラとどーなってんの?」と聞いてきた。


「ええっ? どうって、どうも……その」


突然の問いにビビって何も答えられなくなる私。

すかさずクノさんはギロリと鋭い目を私に向ける。


「優しい、先輩だと思います」

「で?」

「私にはとうてい手の届かない存在っていうか」

「で?」

「あと、バンドやバイトで忙しいですし」

「だから?」


言葉をにごし続けてもクノさんは逃してくれない。