終業式を終え、夏休みに入り少し経って
覚悟していた「その日」は、すぐに来た。
「なに紗和、緊張してんの」
「…胃が痛いなぁと思ってね…」
「俺がついてるのに?」
「ふふっ。そうね、多分気のせいだわ」
「ははっ、当たり前」
そう言って笑った伊織が、一度わたしの頭を撫でてくれる。
――…ピンポーン。
何よりも見慣れている日本家屋を前に、しっかりと立つことができた。
「はーい…、あら紗和、伊織くん。待ってたわ」
「ただいまお母さん」
並んでいる靴がたくさんあって
わたしと伊織が来たのは最後だったのだと察する。
すぐさま母を立ててから菓子折りを渡した伊織は、相変わらず完璧だと思った。