「あのっさー、毎晩毎晩オンナ連れ込んでは夜中中イチャイチャすんのも大概にしてくんない?に・し・な・く・ん?」


「んー?……んー…」


日曜日の昼下がり。くわぁ、なんて呑気に欠伸をしながら寝ぼけ眼で寝室を出てきたルームメイトは、俺の話なんて微塵も聞いちゃいない。
話を聞くどころか起きて早々共同の冷蔵庫を漁り始めては「なぁ、このプリンって食べても良いんー?」と他人の食いモンを強奪しようとしている始末だ。

しかも昨日買ってきたばっかのやつ、3つ入りのプッ○ンプリン。


「ダメに決まってんだろ!一個は今日のおやつだけどあとふたつは凍らせてアイスにすんの!!」


「えーー別に一個でも良くなーい?一個ぐらい俺にくれても良くなーい?」


「ダメだって言ってんじゃん!………ってそうじゃなくてさ!!!!お前さぁ!?」



話の話題をすっかりプッ○ンプリンにすり替えられてしまっていた、危ない危ない。
きょとんとした顔で首を傾げてヘラヘラと薄い笑みを浮かべている仁科に、俺はビシッと人差し指を突き出しさっきと同じことをもう一度繰り返した。

「毎晩オンナ連れ込んで夜中に騒ぎまくんのやめろって言ってんの!!お陰で俺超寝不足!!あとオンナの香水かなんか知らねえけど部屋が甘ったるい匂いしてほんとにやだ!!!!」

えー、なんて言いながらそれでもやっぱりヘラヘラしているこの男、俺のルームメイト兼同級生の 仁科千尋 (ニシナチヒロ)はとにかくモテるのだ。
この全寮制の男子校に編入してきて早2ヶ月、仁科によって毎晩のように連れ込まれるオンナたちは俺の睡眠の妨げでしかないしおまけに香水嫌いの俺にとってオンナたちが撒き散らして帰る強い香りはまさに生き地獄としか言いようがない。

この2ヶ月の間にもう何度も何度もやめてくれと頼んでいるのだがその度にごめーん次からは控えるーなどと平謝りされもうずっとそれの繰り返しなのだ。
先生に申し出て正当な理由だと判断されれば部屋を移動することも出来るんだけど…




このキツーイ共同生活の中、俺にはそうする事が出来ないめちゃめちゃ重大で超大きな秘密があるのでした。