「乗れよ」


玄関を出たら車寄せで伊織さまが私を待っていた。


運転手付きの高級車に乗るように促されたけど、丁重にお断りする。


「大丈夫です。私は歩きで登校しますから」


身長180センチ以上で、スタイル抜群の彼は濃紺のブレザーにチェックのズボンの制服が惚れ惚れするほど似合っていてカッコいい。


漆黒の髪と、片耳だけピアスをつけているのも彼の美しさをより引き立てている。


育ちの良さがにじみ出るようなその上品でクールなたたずまいに、思わず気後れしてしまう。


明るい光の下で見る彼は相変わらず眩しい。


伊織さまと同じ車に乗って一緒に登校するなんて、考えただけでも恐れ多い気がした。


「いいから、乗れって。話があるんだ」


彼はイラっとしたように眉を寄せる。