「うっ……」
 耳が痛い。頭がクラクラする……。
「うう……」
 呻きながら、うつ伏せになっていた体を起こす。
(すごく体が重い。まるで誰かに乗っかられてるみたい)
 ずるっと体の上から、何かが滑り落ちる気配がした。
「え? ――クロちゃん?」
 振り返ると、私に覆いかぶさるようにクロちゃんが倒れている。
 ……本当に乗っかられてた。
「おいしょ!」
 私はクロちゃんから抜け出して、体を揺する。クロちゃんはフードを深く被ったままぐったりとしていた。

「ちょっと、大丈夫?」
 ぴくりともしない。
 不安になってきて、軽く揺すっていた手に力が入った。
「ねえ、クロちゃん! 起きて!」
「うう……」
 思い切り揺すると、クロちゃんが呻いた。私はほっと息を着く。
 とりあえず、大丈夫そうだ。
「う……ん」
 クロちゃんが唸りながら、瞳を開けた。
「あ、れ?」
 乾いた声を出して、ゆっくりと起き上がる。私はクロちゃんを見据えた。
「大丈夫?」
「……うん。キミは?」
「ちょっとだけ耳が痛いけど、大丈夫」
「そっか」

 頭のふらつきはもう消えていた。
 少しだけ耳鳴りのような、閉塞感のようなものがあって、耳は若干痛む。でも起き抜けよりは大分良い。