#06


 甘い言葉でわたしを惑わせて。
 ボロ雑巾のように捨てたいんだよね?

 きっと、わたしは、仁瀬巧の玩具。


「ここ、赤で塗ればいい?」
「はい! って、そんなこと仁瀬くんにさせるわけには……。当日お手伝いしてもらえたら、万々歳なので」
「遠慮しないで、こき使ってよ。今日はラストまで手伝えるから」
「こき使うなんて、とんでもない……!」

 今しがた学園祭をぶち壊そうとしていた男が。

「初めてしたよ、こういうの。面白いね」
「しゃ、写真撮っていいですか!?」
「はは。ペンキ塗ってるだけなのに? 別にいいけど」
「なんて貴重なショット……!」

 精力的に参加している。
 というよりは――
「塗り方、綺麗ですね。しかもはやい!」
「そう? 適当だけど」
「適当でそのクオリティさすがすぎる」

 愛想ふりまいて。
 いい人ぶって。
 
 協力者のフリして、みんなを操っている。

「特進って。勉強ハードなんですよね?」
「みんな休み時間も参考書読んでるって噂、ほんとですか」

 目の前の王子様のトリコになっている。

「そうでもないよ。みんな普通のやつらかな」
「またまた〜」
「見ればわかるって。そうだ。今度、遊びにこればいい。スマホいじってるやつもいれば音楽聴いて寝てるやつもいるから」
「えーっ、遊びに行っていいんですか!?」
「もちろん」