耳の真横の髪の毛を、ひと束。手に取ってぐっぐっと押さえつけるようにしながら、拳の中に収めるようにしながら、癖をつける。

乾燥でパサついた髪が、指先を傷つける。



纏わりついてはこないけれど、絡んで、ぎゅっと縛りつけられて、痛い。

ぱらりと抜けた髪の毛が、3本、てのひらから滑り落ちる。



「バイバイ」

彼の顔を思い出して、泣きそうになった。



私と仲のいい彼が離れ離れになる原因は、言うなれば【転校】という不慮の事故のようなものなのだけど、実際、もともと近くはなかった。

図書委員会で一緒。何度か話すことがあった。友だちが本当に数少ない私からしたら、彼は親友で。彼からしたら【人間】という程度だったのかもしれない。