「気にしなくていいよ。若いときは、誰だってハメ外したくなっちゃうもの」



優しい笑顔を向けられるたびに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


泉くんの行っていたとおり、“慣れ”は怖い。

何度も暗黒街に通ううちに、寮を抜け出すことに何の抵抗も感じなくなっていた。



「1週間、わたしの家に泊まってちょうだい」

「いやっ、そんな迷惑は掛けられません……。一人で大丈夫です」


「そう? だったら、お夕飯だけでも食べにきて。ね?」

「……はい。ありがとうございます」



すごくありがたいと思った。

重たい気持ちを抱えたまま、ずっとひとりで過ごすのは耐えられそうになかったから。



最小限の荷物だけ持って学校をあとにした。


北村さんとは夜ご飯を一緒に食べる約束をして、いったん玄関で別れた。