その日以来、私は神田くんを避ける生活を続けていた。


まずは電車の時間を一本早くし、彼と遭遇しないように心がけるところから始まり。

彼と関わらないよう細心の注意を払っていた。


幸い、彼からも話しかけられることはなく、なんとか平穏な日々を過ごせていた。


彼との関わりがピタリと絶え、付き合っているという噂も落ち着いたある日のこと。

「白野さん」


お昼休みに、沙月ちゃんと食堂に向かっていると、突然優しい声が私を呼んだ。

心落ち着くようなその声に、今の私はどきりとしてしまう。


恐る恐る振り向けば、私のよく知るメガネをかけ、真面目な姿である神田くんがそこにいた。

もちろんこの間に見た彼の姿が不真面目だというわけではないけれど。


あの和彫りが今もシャツの下に隠れていると思えば、もういつも通りの接し方をできない。