「うう~ん……」

 指先に、草や土の感触を感じる。全身が冷えていた。明日香は身を震わせると同時に目を開く。

「あらっ、気がついたの!? 大丈夫?」

 甲高い声が上から降ってくる。何とか上を見ると、サンバイザーを被ったおばあさん二人が彼女を見下ろしていた。

 周りには草木が生えていて、小さな社がおばあさんたちの後ろに見えた。

(そうだ、私古墳に来ていて……)

「あの……」

 少し息をしただけで、激しく咳き込んだ。体はだるくて、力が入らない。

(私、何をしていたんだろう。どうして全身びちょびちょなの?)

「掃除をしにきたら、お姉さん倒れとるでビックリしたに。救急車呼ぶかん?」

 若い世代では使わなくなってきた、地元の方言丸出しのおばあさんが、ガラケーを取り出す。ストラップについた鈴が鳴った。

 返事をしようと思ったが、口が動かない。急激な眠気に襲われ、明日香は目を閉じてしまった。

「あれま。ほいカズちゃん、やっぱり救急車だに」

「今呼ぶでのん。ええと、何番だっけ。ほいお姉さん、しっかりしりんよ。傷は浅いでのん!」

 おばあさんは明日香の肩をぱしぱし叩きながら、救急車を要請した。