「きりーつ、れーい」
間延びした日直の号令が響く。
少し前までは号令が終わるか終わらないかのうちに慌てて教室を飛び出していく部活組の姿が見えたけど、さすがにほとんどの生徒が部活を引退している今は、みんなのんびりと帰り支度をしたり、喋ったり。
だけど、さすがは受験生だ。遊びの計画をたてる声が聞こえることはなく、そのかわりに居残り勉強を始める生徒の姿もチラホラ見えた。
さて、俺は。
「筒井ぃい~!」
カバンを肩に背負ったところで、俺の席にやってきた千葉。
「今日久しぶりにゲーセンでも寄ってかね?」
…こいつも受験生だったよな…?
「無理」
「何で!もう、最近勉強ばっかで息つまりそうなんだよ!」
「…じゃぁ彼女誘えよ」
「無理!俺はな、夏海の前では勉強なんてヨユーでこなせちゃうぜ☆キャラなんだよ!こんな息詰まってるとこ見せられるか!!」
千葉は本当はあまり勉強が好きじゃないクセに、2個年下の彼女に頼りにされたいが為だけに学年トップクラスの成績を保持しているという奇特な奴だ。
「今日塾ない日だろ?筒井なんて受験ヨユーなんだしさぁ、たまには付き合えよぉ~」
俺の肩に手をまわしひっついてくる千葉。うざい。
「無理。部屋の掃除とかあるし」
「は?掃除ぃ?」
「そ。来客あるから」
「は?誰だよ来客って」
「…………衛藤だけど」
ま、わざわざ嘘つくのもな…と思って正直に話したのだが
「どえええええええ!?!?」
わずか3秒後、激しくそれを後悔した。