2話「ケンカの後の」





 千春と秋文が一緒に暮らすようになって約2年。
 別々に暮らしていた時よりもケンカは増えてしまった。付き合う前は、言い合いのような事は多く、いつも秋文の意地悪な言葉に千春は怒ってしまっていた。
 付き合い始めてからは、秋文が千春に溺愛しており、優しくしてくれていたのは千春自身もわかっていた。
 けれど、一緒に住めば一緒の時間も増えるし、生活環境の違いも多く、トラブルは増えてしまう。それは、どこの恋人も同じだろう。

 ケンカは少ない方だったけれど、元々少なかった2人にとっては、ぎくしゃくした時間はとても辛かった。



 そこで、決めたルールがあった。
 どんなケンカをしたとしても、同じベットで眠ること。それは絶対守ると決めたのだ。
 ケンカをした時は、大きなベットで相手の方を向かず、離れた場所で寝る。けれど、朝起きると何故かくっついて寝てしまっていた。
 すると、どちらから「昨日はごめん。」と謝り、そしてはにかみながら微笑み合う。
 そうやって、何度も仲直りをしてきたのだ。
 
 きっと、ケンカをしない恋人なんていない。
 千春はそう思っているし、きっと秋文もそうだろう。
 ケンカをして仲直りする度に、「この人のお嫁さんになれてよかった。」と千春はいつも再確認できて、更に彼を好きなるのだった。


 けれども、それはケンカをして仲直りをした時の話であり、ケンカ中は千春だって怒っている。
 今は、「あんな事でそんなに怒らなくてもいいのに……。」と思っていた。