女性に人気のブランドを数多くデザインしているアパレル会社に着いた。

「ここ、ですか?」

「そう。ここだ。
 老舗ブランドでもあるが、ここ最近も急成長を遂げた会社だ。
 新しい商業地に是非入れたいとお客様たってのご希望だ。」

「私もここのブランド好きなので嬉しいです。」

「そうか。
 藤花が俺の隣にいてくれれば女性目線の意見も聞けていいかもしれないな。」

 今さらそんな簡単なことで喜ばれると私がここにいる理由を疑ってしまう。

「本当に私利私欲の為なんですか?
 私が同行するのって。」

「おいおい。勘違いするな。
 俺は俺なりに内田藤花の手腕を買ってる。」

 思わぬ賛美に目を丸くする。

 もっと詳しく聞こうかと目論んで見上げた彼の表情が引き締まったのが分かった。

 私語は会社に入る手前で遮られた。

「今からはさすがに気持ちを切り替えるぞ。
 当たりがきつかったら、後からちゃんと言って。」

 優しく言われて胸がキュンとした。
 本当に今までの高宮課長とは180度変わった彼に違った意味で敵わない気がしていた。