緊張する。



今の気持ちはその一言だけだった。



「恵美、お前顔強張りすぎ」
「だ、だって緊張するに決まってる…!」



逆に彼が緊張していないのが変だ。



「あんま力むなよ。
リラックスして」



「そんなこと言われても…できない」



ドクドクと心臓を脈打つ音が速くなる。
それぐらい緊張していた。



「まだ始まったばっかだけど?」
「最初って重要でしょ!」



「そんなことねぇよ。
努力家のお前のことだから、なんでもできる」



そ…そんなこと言われたら何も言い返せなくなってしまう。



結局いつも彼に上手くまとめられてしまうのだ。



そうこうしているうちに、体育館前に着いてしまった。



「着いちゃった…」
「そうだな」



二人して体育館を見上げると、いつもよりそれが大きく見えた。



ここで、また始まるのだ。



「じゃあな、俺裏口の方からだから」
「あっ…うん…!」



「……だから緊張しすぎだって」



彼が笑う。
そして私の頭を撫でた。