【side 茜】


「ほら、みんなー。席ついてー。

今から、転校生を紹介するわよ」


教室から、女の人の大きな声が聞こえてくる。


私はその声を聞きながら、〝5年3組〟と書かれた札をじっと見つめていた。


「佐藤さん、入っていいわよ」


先程大きな声を出していた女の人が、教室からひょこっと顔をのぞかせる。


私はその言葉にちいさく頷くと、少しためらいながら、教室へと上がりこんだ。


教卓の前に立たされた私は、一気にみんなの注目を浴びる。


怖くて少しだけ、手が震えた。


そんな私のそばで、チョークを片手に黒板に文字を書いていくのは、さっきの女の人──このクラスの担任の先生だった。


チラッと黒板に目をやると、自分の名前がでかでかと書かれていることに気がついた。