「だから何度言ったら分かるんだ!
 わしは教えてやる気はない!!」

 ピシャリと縁側の引き戸が閉められた。
 肩を落として、聞いているのかも分からない閉められた引き戸に声をかけた。

「何度も押しかけてすみません。
 どうしても天野さんに教えて頂きたいんです。
 お饅頭ここに置いていくのでよろしければ皆さんで食べて下さい。」

 何度目かの訪問も聞く耳さえ持ってもらえない。
 食べてもらえるのかも分からないお饅頭を縁側の隅に置いていく。

 前に倉林支社長のことをボンクラ息子呼ばわりしたおじさん。

 そのおじさんが大太鼓を子ども達に指導していて、山野大太鼓一座の座長も務めている。
 だからおじさんに認めてもらえなければ、フォレスト工業山野支社のお祭りに地元の大太鼓一座を呼ぶことは夢のまた夢なのだ。